
キットレンズからの卒業を考え、最初の「Lレンズ」を探している方。
F2.8の「大三元レンズ」に憧れるけど、価格や重さがネックで一歩踏み出せない方。
旅行やスナップが好きで、レンズ交換の手間なく「撮りたい瞬間を逃したくない」と強く願う方。
そして、RF24-105mm F4L IS USMを候補に挙げながらも、心のどこかでこう思ってはいないでしょうか?
- 「F4の明るさで、本当に満足できるんだろうか?」
- 「結局、便利だけど写りは“中途半端”なんじゃないか?」
この記事は、まさにそんな方々のために書きました。
僕も同じでした。Canonのミラーレスを手にして、京都で過ごした学生時代の5年間。
時には京都を飛び出して旅をしながら、いつもカメラバッグに入っていたのは、このレンズ一本だけでした。
今日は、その5年間の膨大な写真の中から、このレンズの実際をお話しします。
結論:利便性と画質の折り合いがついたバランスタイプの標準ズーム
RF24-105mm F4L IS USMは、広角24mmから中望遠105mmまでを1本でカバーする高い利便性と、Lレンズならではの高い描写性能を両立した標準ズームレンズです。大三元レンズほどの明るさや、単焦点レンズの絶対的な解像感には及びませんが、ズーム全域で安定した画質と高い機動力をもっています。あらゆる撮影シーンに高いレベルで対応できる、バランスの取れた信頼性の高い1本です。
魅力①24-105mm F4という汎用性の高いズームレンジ
本レンズの最大の特長は、風景や建築物の撮影に適した広角24mmから、ポートレートやスナップで被写体を切り取りやすい中望遠105mmまでをカバーする汎用性の高いズームレンジです。これにより、レンズ交換の手間なく、様々な構図や被写体に対応できます。また、ズーム全域で開放F値がF4で一定のため、ズーム操作をしても露出が変わらず、特にマニュアルモードや動画撮影において安定した撮影が可能です。
魅力②ボディと協調した圧倒的な手ぶれ補正
ボディ内手ブレ補正機構を備えたEOS Rシリーズのカメラと組み合わせることで、「協調IS」が機能し、最大で8.0段という凄まじい手ブレ補正効果を発揮します。マウント径が大きいこともあってか、比較的大きな手ブレも防いでくれる印象があります。
SONYとCanonの手ぶれ補正に関する個人的感想は以下の記事
魅力③Lレンズとして優れた防塵防滴・AF性能
プロの過酷な使用環境を想定したLレンズとして、マウント部やスイッチパネル、各リング部などにシーリングを施した防塵・防滴構造を採用しています。これにより、小雨や砂埃が舞うような環境でも安心して撮影に集中できます。AFも優秀で静止画撮影では高速かつ高精度なピント合わせを、動画撮影では静かで滑らかなピント移動を実現してくれます。

ここまで濡らすのは良くないですが、厳しい環境でも正常に動作してくれます。翌日以降も問題なく動きました。
妥協点:Lレンズと言っても画質は大三元や単焦点には及ばない
このレンズはLレンズとしてシャープに写りますが、よりハイクラスなレンズと撮り比べてみると、画質の差が見えてきます。
もちろん、これらの差は画像を大きく拡大して初めて分かるレベルの場合も多いです。しかし、風景写真の隅々まで完璧な解像感を求めたり、作品として最高のシャープさを追求したりする場面では、より優れたレンズが存在することは事実です。


同様の撮影条件(70mm, F5.6, 15s, ISO200)で比較。
手すりや階段の描写から、大三元レンズにはシャープネスで劣ることが分かります。

厳密に比較するとわずかに差が見えてきますが、RF 24-105mm F4 Lも十分高画質です。
作例
1. 広角端で醍醐寺の秋を撮る


紅葉を額縁に見立てて五重塔を撮りたかった。理想の構図を探して歩き回り、見つけた場所で粘る。広角24mmでダイナミックに切り取りつつ、ズームリングを少し回して微調整。この柔軟性がなければ、撮れなかった一枚です。
2. 人混みの頭上から掴んだ、夕暮れの清水寺


日が沈む一瞬を狙って。でも、境内はすごい人だかり。最前列は無理だったので、カメラを頭上に掲げてライブビューで撮影しました。不安定な体勢でもブレずに撮れたのは、間違いなく強力な手ブレ補正のおかげです。
3. 食事も綺麗にとれる便利な望遠側


テラス席での一枚。席を立たずに、望遠側の88mmでスッと画角を調整。F4でも焦点距離を稼げば、背景は十分に美しくボケてくれます。こういう「ちょっと寄りたい」が叶うのが、このレンズのいいところ。
4. F4でも撮れる。天の川と桜


「星を撮るなら明るい単焦点」が定説です。でも、持っているのはこのレンズだけ。F4、ISO6400、15秒。一枚撮りです。現像でかなり頑張りましたが、これだけの情報を写し撮ってくれるポテンシャルが、このレンズにはありました。
5. 高速AFで捉えた偶然の光景


これは本当に偶然の出会い。静かな境内を歩くお坊さんの列。慌ててカメラを構えましたが、静かで高速なAFがスッとピントを合わせてくれました。場の空気を壊さずに、貴重な瞬間を記録できたのはこのレンズの性能に助けられました。
6. フィルター無しでこの色。貴船神社の新緑


目に痛いほどの新緑と、朱色の灯籠のコントラスト。PLフィルターは使っていません。記憶以上に鮮やかな色彩をレンズが捉えてくれました。この発色の良さもLレンズの魅力です。
7. F4のボケと向き合う。ネモフィラ畑のポートレート


望遠端105mmで撮影。手前にネモフィラを入れて前ボケを作りました。正直に言うと、「もっとボケたら最高なのに」と思う気持ちはあります。でも、被写体との距離や背景を選べば、F4でも十分にポートレートは楽しめます。これがこのレンズのリアルです。
8. 山の上から見下ろす、夕日に染まる棚田


山の道を登り、木々が開けた場所から。広角24mmで、夕日に照らされる棚田の雄大さを余すことなく写し止めました。Lレンズならではのクリアな描写が、空のグラデーションと水面の反射を忠実に再現してくれます。
まとめ:画質or利便性、何を重視するかで評価が変わるレンズ
このレンズの評価は、突き詰めると一つの問いに行き着きます。
それは、「自分にとって、理想のレンズバランスはどこにあるか?」ということです。
カメラのレンズ選びは、常に「画質」と「利便性」という2つの要素の綱引きです。
ここで、2つの撮影スタイルを考えてみましょう。
- スタイルA:画質に振り切るスタイル
最高のシャープネス、最高のとろけるボケ味。そのためなら、レンズを複数本持ち歩く重さや、撮影現場でのレンズ交換の手間は厭わない。一枚の作品性を極限まで高めたい人。 - スタイルB:画質と利便性を両立させるスタイル
Lレンズとしての高い画質は絶対に譲れない。しかし、それと同じくらい、旅行やスナップで目の前のシャッターチャンスを逃さないための機動力も重要。一本のレンズで、身軽に、かつ高画質に撮影を完結させたい人。
もし理想がスタイルAなら、このレンズはベストな選択ではないかもしれません。より専門的な単焦点レンズやF2.8ズームレンズの方が、あなたの求める究極の画質を提供してくれます。
しかし、スタイルBなら、このRF24-105mm F4L IS USMは、まさに「最適解」となり得るレンズです。
このレンズは、画質と利便性、どちらか一方を犠牲にした「妥協の産物」ではありません。その両方を高いレベルでまとめ上げ、多くの撮影シーンで満足できる「着地点」を見つけ出した、バランスタイプのレンズなのです。目の前で次々と変わっていく光景を、ストレスなく、美しい画質で記録し続ける。そんな撮影の楽しさを、この一本はきっと教えてくれます。